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洋書とたまに和書の感想ブログです。洋書読みお友達がほしいです。

洋書感想「Strategies for success」

 今回は小説ではなく、学校の授業で使用していた教科書「Strategies for success

-A practical Guide to Learning English-」が非常に良かったので、記事を書きます。受講していた授業は、英語の勉強法や自分のキャリアの探し方などを教えていました。この本の主な内容は、英語が第二言語の学生がどうやって英語を上達させていけばよいか簡潔で丁寧に書かれています。英語の勉強方法は人によって異なることを念頭に置き、いくつかのクイズに答えながら自分がどのような学習タイプなのか、または強みや弱み(読解力や発音等)を診断できます。そして、ときには英語を勉強することが嫌になったとき、どうやってモチベーションを保つかなど、英語を勉強する人の心境に寄り添う本だと思いました。

 

 私は英語を勉強し始めて自分の気持ちを伝えられないもどかしさについて書かれている章が大好きでした。一部意訳して抜粋します。

“私たちは成長するにつれて無意識に母国語を学び、自分が何を考えているか他人に伝え、理解してもらうことを自然に身につけていきます。個人差はありますが、言葉を使って自分を表現して相手に自分の思いを伝えることでコミュニケーションが成り立ち、人との繋がりを感じられるでしょう。だけれども英語を勉強し始めると、あなたはうまく話せず、全て正しく話すこと・理解することができません。英語を話すとき、母国語では無意識にできていた自分の気持ちを伝えられず、自らの賢さやユーモアを他人に伝えることができません。相手が自分自身のことを知的じゃないことが思われることにフラストレーションがたまるでしょう。“

 

「学生としてではなくある程度年をとってからアメリカに来た移民は、英語を喋れないことのフランストレーションが高くなりやすい」ことを、この章の授業中に教授が話しだし彼女が体験したいろんなエピソードを話してくれました。例えば、ロシアから移民としてきたDr.は自国ではそれなりの地位にいたのにもかかわらず、英語が得意ではないため英語の初心者クラスから始めなければなりませんでした。何回も授業を落とし、しまいには妻のほうが先に英語のレベルが上がっていきます。そんな中彼は、授業の度にロシア時代に得た功績の論文や話をしようとします。彼は自分の現状に満足できず、過去の輝かしい話を繰り返すのです。しかし、そんな彼の話を周りの人は楽しく聞けるのでしょうか?そのうち彼は学校を辞め、その後どうなったかは知りません。この話を聞いた時、私は彼の気持ちが痛いほどわかりました。

 

 私は院卒で研究職として自分のキャリアに自信を持っていました。初対面の人に職業を伝えるとき、少し自信をもって話していた時期もありました。(天狗になっていたので、恥ずかしい…。)しかし、アメリカに来てから、自分の積み上げてきたキャリアがまったく通用しない悔しさを知りました。何百回も英語を使う場面があるのに表面的な会話しかなく、英語がもっと自由に使えたら一期一会の出会いがより濃い経験になったと後悔することも数多くありました。また英語がうまくしゃべれないことで、まるで子供のように扱われるようなこともありました。英語の勉強は続けていたのにうまく話せない、こんなつらい事が続くならばもう英語の勉強なんて辞めてしまおうと、夜中に泣きながら寝たこともあります。皆さん、一度ぐらいこんな経験ありませんか(英語に限らず)?

 

 この本ではそんな自分のエゴを認めながら、失敗を恐れずリスクを取ることが英語勉強上達のカギと提案しています。「英語を間違えることを恐れないため」などのアドバイスはいい意味で平凡なのですが、語学勉強者としての苦しみに寄り添ってくれたので、この言葉が非常に心に染みました。例えば人に悩み事を相談した時、具体的な解決策をすぐ提案されるより一度こちらの気持ちに共感してアドバイスされるほうが、すんなり聞く気になるみたいな感覚でした。

  

 近頃YOUTUBESNSの発達により英語勉強ツールは莫大的に増えています。また非常に英語力が高い人たちが、「どうすれば英語をしゃべれるようになるか?」などのアドバイスが巷に溢れています(私もその言葉に弱い笑)。短期目標を定め繰り返し続けることが物事を成し遂げるために必要だと、多くの成功者は語っており、私も近頃この目標設定・行動の大切さを実感しています。しかし、毎日英語の勉強を続けられない自分、目標をたてても自分の成長がみられないとき、もう英語の勉強なんて辞めてしまいたい。と自暴自棄になることもあるでしょう。そんな負の感情も認めてくれながら、励ましてくれる美しい英文を綴った本だと思います。

 

Strategies For Success - A Practical Guide to Learning English"

https://www.abebooks.com/9780130413925/Strategies-Success-Practical-Guide-Learning-0130413925/plp

 

 

洋書感想「American Dirt」アメリカンダート

あらすじ

 メキシコのアカプルコで本屋を営んでいるLydiaは、姪の誕生日パーティー中にカルテルの襲撃に遭い、大切な家族(母、夫、親戚)16人を失った。唯一生き残った息子のLucaと共に、住み慣れた故郷を離れ生きるためアメリカを目指す。

 

感想

 この本は2020年初めから、本屋の店頭やウェブサイトで大々的に売り出されており、表紙が綺麗だったことから印象に残っている本だった。でも、新作だからまだ高いし購入する予定はなかった。だけれども、偶然立ち寄った地元の小さな本屋でサイン入りの本が売られており、気が付けば買っていた。コロナの影響で多くの店が閉店していく中(3月中旬)、少しでも地元の本屋を応援したかった気持ちもあった。

 

 ただ1/5程度読み終えた後、何気なくAmazonでこの本について調べたとき、予想以上に低評価のレビューが多く、賛否両論がかなりあることをブログやニュースから知った。その時点で読む気が少し失せたけど、なぜここまで批評されているか興味をもったため頑張って読みきった。本の内容としては、情景も細やかでスリルがあり全体的には面白かったと感じた。しかし、小説の展開で

  • レイプや暴力などの過激なシーンや主人公(Lydia)の回想(メキシコで幸せに暮らしていた時)が多い。
  • Lydiaの子供である8歳のLucaが本好きだからといって、英語も喋れて地理が詳しいのは年齢に対して頭良すぎ。と感じていた。

 

 しかしながら、この本を読み終わった後Reviewを調べるにつれ、本に対しての印象が変わってしまった。まずこの著者はアメリカ白人でメキシコにルーツもない。フィクションなことを考慮しても、現実のメキシコや移民に対して異なる部分が多いと指摘が多くみられた。また疑問点が多いにも関わらず、有名作家が帯に絶賛コメントを書き出版社の力で売り出されている。批判されているポイントは、最後にリストにまとめてみたが、そのいくつかの批判レビューを読み続ける内に、本に対して感じた違和感の理由がわかってきた。フィクションだとしても、実際にアメリカを目指す移民とかけ離れてすぎているのではないかと感じた。

 

 まず、過激なシーンや主人公の回想は、読者に憐憫の気持ちを強く植え付けたかったのかと感じた。主人公は、飢えや暴力がすぐ隣にある貧困層アメリカンドリームを目指して移民になるのではなく、大学卒で店を経営している中流階級のメキシコ人が、カルテルから逃れるために移民にならざるを得なかった。おそらく読者(本を好んで読む人達)は、自分の安定した生活がやむ終えぬ状況で奪われてしまったらと、同情しやすくなるように誘導しているように感じた。確かに小説は現状ではめったに起こらない悲劇的な事故や無秩序な暴力を入れて、読者をハラハラドキドキさせることは必要だと思う。しかし、この本はその表現方法が雑で意図的に感情を操作しようとしているように感じた。また、息子の英語がそれなりに理解できる設定も、実際の移民はまず言語の壁にぶつかるだろう。また、英語が喋れてもこの年齢の子供が、旅において地理の知識で母親を助け危機的状況を乗り越えることができるだろうか?

 

 私は日本で生まれ育ち、中南米へ行ったこともなく、恥ずかしながら知識もほぼない。だから、この本に書いてあるスペイン語やメキシコのカルテルの影響の大きさや移民問題が事実かどうか判断できなかった。私のように初めてメキシコについて知る読者は、小説に書かれたことが現実に起こっているものだと信じてしまうかもしれない。今回のように批評レビューを読まなければ、私の感想も多くの著名作家も推薦しているだけに面白い話だった。文中にでてくるスペイン語は新鮮だったな。メキシコはカルテルの意思一つで人を殺すことができるのか。怖い世界だな。とそれだけで終わっていたかもしれない。

 

 ビザを持たない移民問題は、現在アメリカで大きな問題となっている。だから、フィクションだとしても、白人のアメリカ人が違和感のあるスペイン語で現状とはかけ離れている話を書いた。またその本は出版社の大きな力で、過剰評価され売り出されている。実際に批評家たちは、世にはもっと移民について書かれた素晴らしい本があるので、この本は読む必要ない。とコメントしている。

 

 だからサイン本残っていたのかなと…。ただ小説として楽しめなかったが、なぜこの本が本屋で売り出されているのにそこまで非難されているのかと背景を勉強できたのはよい経験だった。

 

 以下は、この本について批評されているポイントに私なりにまとめた。もし、ご指摘等があればコメントください。

 

  •  著者がメキシコ人でもなく、メキシカンアメリカンではない。

 著者のあとがきで、この小説を書くにあたって数年に及んで移民について調査、取材は行った、また祖母がプエルトリコスペイン語が主流)からの移民、また旦那が違法移民だった(現在は結婚によりグリーンカード取得)と書いてある。それでも、著者自身は白人、アメリカ国籍、メキシコにルーツはない。

 多くの中米出身やルーツをもつ批評家達が、文中のスペイン語は古臭く奇妙だと指摘している。Youtubeの動画(The American Dirt Controversy)で、もしメキシコ在住のスペイン語母国者が出版前にドラフトを見ていれば、このような変なスペイン語が出版されることはなかったのではないか。

  • 小説の中にでてくるメキシコのカルテルの情報が古い。

 現代(2020年)にしては、カルテルと警察の癒着や日常的に書かれている暴力に関しての記述が古い。

  • 豪華な帯コメントと過剰なPR。

 他にも中米からの移民について書かれた素晴らしい本が多く出版されてるいが、多くの著者は低賃金で本が店頭に並ぶ機会は低い。それなのに、なぜこの本が、ここまで売り出さているのか?出版業界の闇を感じる。

  • 出版記念パーティーでの飾り付けが不適切。

 出版記念パーティーでの飾りつけで、鉄格子に紫の花でデコレショーンされたアメリカとメキシコのボーダーを表現したオブジェクトが展示された。この国境を模した展示物が、華やかすぎて不適切すぎる。(小説の中でも、このボーダーを超えるために過酷な旅をしなければならなく、何人かはボーダー越えが成功しなかった。)

 


What's so controversial about 'American Dirt'? | The Stream

 

あとリンクが張れなかったもう一つのYoutube

The 'American Dirt' Controversy

https://www.youtube.com/watch?v=-f3Ina9i7Gg

 

評価 3/10

単語 130000 words

 

 

洋書感想「Hillbilly elegy」

あらすじ

“私達のようなプアホワイトな田舎者はRed neck, Hillbilly, white trashと呼ばれる” ラストベルトの小さな荒廃した街に生まれた著者が、薬中の母と何人も入れ替わる父親と住む家庭崩壊した家から飛び出し、海軍で紛争地に従事、その後有名大学のLaw schoolを卒業、アメリカンドリームを手に入れるまでの自叙伝

 

 

 

感想

なぜアメリカはトランプが大統領になれたのか?トランプ支持層のアメリカ白人(プアホワイト)の実情を明らかにしたと話題になった本。ヒルビリー(白人の田舎者)は、貧困家庭が多く、暴力、アルコール、薬中中毒率が高く、大学進学率が低い。またアメリカは世界で一番成功している国で、そんな国に生まれた自分たちを誇りに思っている。ヒルビリー達はオバマが大統領に就任したとき、肌の色から出生地を疑い、他国との共謀論を信じていた。そんな思想が存在することにまず驚いた。確かにこの本は、言葉にされなかったアメリカの内部を表に引きずりだしたのかもしれない。

 

ただプアホワイトについて学べる本かもしれないが、読み進める内に私は荒れていた自身の地元を思い出した。勉強しているやつが馬鹿にされ、大学に行く人が少数の世界。この本ほどひどい環境ではなかったけど(少なくとも私が知っている中で薬物中毒はいなかった)、校則や窓ガラスを破り、授業に参加せず、恋愛問題がおこればビッチの裏切り者としてチェーンメールで回される世界。その行為を楽しそうに支配する層が、ヒエラルキーに立っていた世界。その環境が嫌で抜け出した著書と自分が重なり、場所は違えど、あの世界はどこにでも存在するのだと思った。

 

著者は、祖父母や姉リンジーや親戚の支えと自身の努力もあり劣悪な環境を乗り越えた。その経験から、現在は虐待や貧困家庭の子供たちをサポートする活動に精力的である。最後のシーンで、顔も知らない子供たちのためにクリスマスプレゼントを選んでいるシーンで少し胸が打たれた。

 

あとこの本を読み進めていくうちに既視感に襲われた。後で理解したのだが、一時期はまっていたこんなひどい毒親から飛び出した!系の2chスレみたいだなと思った。この本の前に読んだEducated(Tara Westover)も毒親(簡潔に表現できる便利な言葉だよね)から飛び出した話で、「こんな環境だったけど、抜け出して今は成功している!」を連続して読んだので、なんだか少し疲れた…。

次は妄想の世界を楽しみたい…。

 

英語としては、わからない単語が複数ありなんとか読める感じ。もっと単語力つけたい。

 

評価 7/10

単語数 59000 word

 

洋書版のリンクの張れなかった…。

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

  • 作者:J.D.ヴァンス
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

初めまして。

 初めまして。Takと申します。

 

2019年後半から洋書にはまりだし、2020年2月にtwitter(ID: Somanyshmears)を開始。読んだ洋書の感想をツイートしていたのですが、短い文章ではなくもう少し深く感想や考察を書きたいを思い、ブログを開設しました。

 

読むのはまだまだ遅いですが本屋に行くのが至高の幸せなので、ふっと気が付けば洋書が家に増え、積まれています。

 

細々と続けていければと思います。よろしくお願いします。