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洋書感想「The handmaid's tale」侍女の物語

あらすじ

アメリカ内にキリスト教原理主義として建国されたギレアデ。女性はランクごとに服の色が決められ、肌をだすこと、財産を持つことは許されない。主人公は名前を持つ事を許されず、権力者の所有物として子供を産むことだけが役目。

 

感想(ちょっとネタバレ)

 この本はオンライン英会話レッスンで、印象に残った本について話していた時に先生から教えてもらった。国の中で女性達にそれぞれの役割があり厳格なルールの下で管理されている。その後、先生が世界観を説明しようとしていたが、うまく表現ができず、なんだかもどかしそうな顔をしていた。最初は、英語非ネイティブの私にわかりやすく説明しようとしているのかと思ったけど、どうやらそうでもなさそう。そこから月日もたち忘れかけていたが、偶然立ち寄った本屋で印象的な表紙を見つけ、この出来事を思い出し読もうと決意した。

 

 読み始めは社会主義ファンタジーの世界かと思いきや、アメリカで建国された国なので主人公が昔の自由だった時代を思いだす場面にアンバランスに感じる。なぜ、自由なアメリカ時代を知っているはずなのに、この制限された世界で生きることを認めているのだろうか?不思議に思いながら、少しずつ引きこまれながら読み進めていく。

 

 多くの小説は、少し非凡な何かしらの才能をもった主人公が、劣悪な環境から紆余曲折あり自分の望んでいた輝かしい未来手に入れるサクセスストーリ―が好まれる。しかし、この小説の主人公は普通である。今の生活に満足せず嫌気がさしているものの、半ば諦めながらこの生活を許容している。自ら変化を起こすわけでもなく、過去この支配された生活から逃げた友達、旦那や子供を繰り返し思い出す日々。この物語は、抑圧された世界で生きる主人公が凡人で感情がリアルなため、まるで自分もその世界にいるような心境に陥ってしまったように感じた。

 

 また国としてヒエラルキー社会を成立させるため、徹底的にお互いを監視させあうこと、繰り返し価値観を刷り込むことの恐ろしさに終始暗い気分になる。女性間でランクと役割を持たすことで、自分の仕事は他人よりましと優越感を持たし、役割ごとに分断させるシステムなど、極端なヒエラルキー社会ではこのような環境を作る重要さを知れた。

 

  私が一番辛くなった場面は、禁じられている服装(肌が露出している)をCommanderに渡され、パーティーに連れていかれたところ。その場所にいる女性は、権力のある男性によって連れてこられ、裏から入手した衣装や靴を着させられているためどれも似合わない。サイズが合わない露出した服など逆に見苦しく、注意しないと局部を見せてしまう可能性もある。その服を渡された女性なら、魅力的に見せることが目的の服が、悲しいことに滑稽にダサく映ることはわかっているはず。それでも権力のある男たちの欲望のため、その服を着ることを強制されるこの着せ替え人形ごっこが、一番自由を制限されていることを痛感した場面だった。酒とたばこが許される小さなユートピアだったとしても、そこに自由はない。ぱっと頭の中で思いついたのは、力関係が不平等なカップルが、ラブホテルで男に無理やりコスプレを強制される感じ。だれかが着た古びたサイズの合わない服など、ただのごみである。それでも、男の存在しない理想のため服を着替える。

 

 話の展開で現実と過去が交差するので、何回も読みかえす必要があった。読み終えた後日本語版買ったが、それでもこの小説自体が私には難しかった。なんだか言語化できないとTwitterで書いたけど、なんとか自分の中から感想を引き出してみた。

 

 決して愉快な物語ではない。だとしても私の心の中に残り続けている。あの時、英会話の先生が伝えようとした気持ちが少しわかるような気がした。